NPO法人設立のメリット
1.社会的信用が高まる
NPO法人設立の1番のメリットは、何と言っても「信用が高まる」ところにあります。
私のところにNPO法人設立相談に来られる方で、よく言われるのは、
「寄付のお願いに行ったときに、法人化しているか聞かれた」
「まずは法人化してから契約しましょうと言われた」
「話の流れで法人化しているか聞かれて、思わず『申請中です』と言った」
など、得意先や協賛先で「法人化」しているかを聞かれるケースも多いようです。
個人を相手にするビジネスでは、そんなに聞かれることはないですが、相手が法人の場合は、そのあたりの信用度を問われます。
なぜ信用が高まるかと言えば、個人や任意団体では財政状況や経営状況が把握しにくいですが、NPO法人の場合は所轄庁(東京の場合は東京都)へ毎年事業報告等を提出しなくてはならないからです。
これら提出書類は、誰でも閲覧(インターネットからでも見ることができます)できるので、その団体の透明度が高くなり、信用が高まるのです。
それと所轄庁の「認証」を受けた上で、NPO法人として設立されたというお墨付きが、相手方に信頼・安心感を与える効果もあります。
ですので、あなたがやろうとしていることのお客さまや、巻き込みたい人がどういう人なのか?
そういったことを洗い出し、その対象者に聞いてみて、法人化を求められるようであれば、法人化を是非検討するべきだと考えます。
あとは行政からの委託事業を、個人よりはNPO法人の方が受けやすいというのがあります。
対象を法人に限定しているところが多いようです。
ちなみに介護保険の事業者指定を受けられるのは、法人だけです。
ただ、最終的には「信用」「信頼」は日々のコミュニケーションの中で育まれるものですから、活動の発信力なども、信用を高めていくためには強化していくポイントかと思います。
例えばある人が、あなたやあなたの事業の事を知って興味を持ったとき、ホームページなどで「どんな団体で、どのようなことをしているのか」を調べると思います。
そんな時、更新のほとんどないホームページだったりすると、本当に活動しているのかなと不安に思われるかもしれません。
逆に、いろんな活動報告、事業報告があれば、「共感」してもらえるチャンスにもなります。
多くの人を巻き込み、事業を大きくして、信用を得ていくためにも、発信力をぜひ強化してみてください。
【ポイント】
あなたのお客様、協賛先は個人ですか?法人ですか?
あなたの事業や活動をどのように発信していきますか?
2.NPO法人名による契約ができる
NPO法人や一般社団法人などの法人格がなかったころ、社団法人などの非営利型の法人を作るのが、非常にハードルが高かった時代があります。
ほとんどのところが、法人格を持てずに任意団体で活動し、多くの団体が「団体名での契約や登記ができない」ことに面倒を感じていたのではないかと思います。
団体名では契約や登記ができない場合どうするかというと、代表者個人の名前で契約することになります。
つまり、事務所を借りるにしても、銀行口座を開設するにしても、公共料金を払うにしても、団体名ではなく、代表者の個人名義となります。
ということは、代表者が変わるたびに名義変更をしなくてはなりません。
面倒でもありますし、リスクもあります。
リスクも「代表者のリスク」と「団体のリスク」の両面がありますが、代表者のリスクとしては「損害賠償の負担」が大きいことが挙げられます。
たとえば、何かの問題が発生し、損害賠償されたときには、責任はすべて名義の個人の責任となり、名義人(代表者など)は、リスクがとても大きくなります。
NPO法人であれば、このような必要がなくなります。
理事や監事などの役員が責任を負うこともありますが、NPO法人で発生した損害は、原則NPO法人が賠償の責任を負うことになります。
あと、相続のリスクもあります。
団体の所有物と認識しているものでも、代表者の個人名義で契約していると、もしその代表者が亡くなると相続財産となり、親族の方が相続します。
そうなると、残された家族の同意がなければ、その物は団体の物ではなく残された家族のものとなり、団体としてお金を出し合っていたとしても、利用できなくなる可能性があります。
NPO法人であれば、その法人の財産ですので、そのような相続問題が発生しません。
組織を長く続けて行きたいという方には、法人格をオススメすることがあります。
先日お話しした方は、社会にとって素晴らしい活動を長年続けられていたのですが、その活動を自分がいなくても、自分がもし亡くなったあとでも、続いて欲しいという想いを持っておられました。
そういう場合にはきちんと法人化し、スムーズに継続できるよう組織化して、多くの協賛企業を巻き込み、もっともっと社会のための活動を拡げて行ってほしいと思います。
【ポイント】
個人名義で契約するリスクは理解できましたか?
3.人材確保に有利
個人・任意団体より、法人のほうが人材確保に有利といわれています。
実際雇用される従業員の立場で考えた場合、法人に勤務するほうが安心と感じる人も多いのではないでしょうか?
結果、任意団体より優秀な人材を集めることができるという論理です。
「中小企業よりも大企業の方が安心」と考える人が多いので、大企業の方が優秀な人も集まりやすいのと同じような話です。
しかし、その論理ははたして本当でしょうか?
もちろんそういう考えの人が多いとは思います。
ですが、中小企業でもNPO法人でも個人事業でも、魅力のあるところに人は集まると思うのです。
どういうビジョンを持って活動するのか?
その「ビジョン」に共感する人が、集まってくるのではないでしょうか?
人材を集めるには、法人格を持っている方が個人事業よりも有利かもしれません。
しかし、それよりも「ビジョンで人が集まる」、そんな団体を目指してほしいなと思います。
そして、安定的な収益を出しつつ、きちんと労働の対価を払える団体を目指してください。
【ポイント】
あなたの団体のビジョンは決まりましたか?
4.寄付金を集めやすい
NPO法人であれば、任意団体よりも信用が高く、「スポンサー」に寄付や協賛を依頼する際にも、アピールポイントになります。
1でも書きましたが、先方から法人格が求められたり、条件だったりするケースもあります。
また任意団体では、2でも書いたように法人格がないので法人名義の銀行口座が開設できません。
代表者の個人名義の口座に振り込むのでは、スポンサーにとっても寄付するのに躊躇があるかと思われます。
あと、寄付や協賛を多く集めたい場合は、「認定NPO法人」への移行も視野に入れて設立するといいです。
というのも、認定NPO法人になると、寄付する側が寄付控除の特典を受けることができます。
例えば、寄付した人が個人であれば、確定申告の時に寄付控除でお金が一部戻ってきます。
法人の場合は、普通のNPO法人や一般社団法人へ寄付するよりも、寄付控除の受けられる上限枠が広がったりするので、寄付や協賛先として選ばれる可能性が高まります。
もちろん、寄付控除を受けるためにその団体に寄付するのでは本末転倒なのですが、認定NPO法人になるためには「認定」を受けなければならず、結構難しい要件をクリアする必要もあり、それをクリアしたということの信用力も後押ししてくれます。
この「認定NPO法人」はいきなり作ることはできず、NPO法人設立後に2事業年度は最低経過する必要があります。
そこでの実績が「認定」時に見られ、要件がクリアしていなければ、クリアして2年が必要となります。
ですので「寄付」を多く集めたいモデルの団体は、「認定NPO法人」を当初から計画してNPO法人を設立すると、スムーズに移行できる場合が多いです。
当事務所ではそういった「認定NPO法人設立」も考慮に入れた設立支援をすることが可能ですので、ご相談いただければと思います。
【ポイント】
寄付を多く集めたい場合は「認定NPO法人」も視野に入れて計画を!
法人化による問題点、あえて言えばデメリットは次のとおりです。
NPO法人設立のデメリット
1.面倒な事務処理が増える
法人化することで、企業と取引できたり、協賛を募りやすかったり、行政からの委託を受けられたりと、社会的信用は高まりますが、その分面倒な書類作成が増えます。
なぜならそれらの書類を作成し、情報を公開することが、信用力の担保となるからです。
NPO法人を設立するにしても、いろんな必要書類を準備しなければなりません。
個人事業であれば、税務署で簡単な開業届を出すだけで事業は始められます。
またNPO法人の場合、毎年の報告書類もあります。
例えば、
事業報告書
収支計算書
貸借対照表
財産目録
役員名簿
社員名簿(正会員名簿)
といった書類を毎年作成し、提出しなければいけません。
確かに面倒ではありますが、多くの人を巻き込んで組織化していきたいという過程においては、必要な機会ともとらえられます。
ここで、どこまでを人に任せて、どこまでを自分でやるのか、という判断が必要になります。
みなさんそれぞれ、得意なところ不得意なところもあるので、一概には言えませんが、私は「本質的に重要な部分は、まずは面倒でも自分でやってみる」ことをお勧めします。
例えば会計記帳。
数字が苦手な人も多いかもしれませんが、自分でやることで、どれくらい出費があってどれくらい収入があるのかを、リアルに感じることができます。
そして、やり方も一通り理解して他のスタッフに引継ぎが出来るレベルになった時に、外注するか他のスタッフに任せる、というやり方がいいと思います。
例えば、商標登録。
いろんな商材を開発して、バンバン商標登録するのであれば、自分でやった方がいいと思います。
商標登録は1つだけというのであれば、やり方を調べて勉強しても次に活かせないので、専門家に任せた方がいいと思います。
例えば決算書類。
依頼サイクルが年に1回のことなので、ここはしっかり稼いで専門家に任せてもいいのではないかと思います。
例えば、ホームページ作成。
ホームページは団体の顔でもありますし、更新をしていく必要もあるので、できれば自分で作成できるところはした方がいいと思います。
もちろん、作成は外注して更新は自分たちで、というのもありです。
そんな感じで、本質的に重要な部分なのか、再現性があるのかなどを基準に、考えると良いと思います。
ご自身で判断ができない場合は、初回無料相談などでご相談ください。
【ポイント】
面倒な作業、どこまで自分でやりますか?
2.運営方針の検討や変更に時間がかかる
NPO法人の運営は、総会又は理事会での合意や決議が必要となります。
個人事業や任意団体の時のように、思いついたらすぐに実行といったことはできません。
また、事業内容は定款の制約を受け、事業内容を変更しようとすると、定款の変更が必要になります。
定款変更のためには、社員総会を開き、変更内容によっては所轄庁の認証または届出が必要で、すぐに変更できるわけではありません。
やろうと思った事業に許認可が必要だったけれど、定款にその文言がなく、定款変更に半年かかった、なんてこともあります。
ただ組織運営ですので、その分チームの力を結集して、より大きな力で事業展開していってもらえればと思います。
【ポイント】
チームの力を結集し、コミュニケーションを大切に
3.設立に時間がかかりすぎる
NPO法人の設立にかかる時間は、場合によって違いますが、ざっくり5~6か月かかります。
株式会社や合同会社、一般社団法人ですと、多くの場合1か月以内で設立できるので、NPO法人の時間のかかり方がわかるかと思います。
4.財産や許認可の名義変更
任意団体や個人事業で今まで所有してきた財産があれば、名義変更しなければなりません。
その名義変更に費用や労力がかかります。
例えば不動産の場合、名義を変えるためには登記変更が必要で、自動車や事務所、その他契約書や許認可も、それぞれ手続きと費用が掛かってきます。
これから起業するというのであれば、ここはあまり気にする必要はありません。
NPO法人設立のメリット・デメリット まとめ
NPO法人を設立するメリット・デメリットは、いろいろあります。
しかし一番大切なのは、あなたが今後どういう活動をし、どういう人を巻き込みたいかです。
私は、起業相談に来てくれるお客様には、事業をすすめるにあたって「顧客の成果につながるかどうかが、一番の判断基準」というお話をさせていただいています。
法人化は、あくまで手段です。
「あなたのプロジェクトを法人化することで、あなたのお客さんにどういう効果があるのか」
「そして、目標を達成するために法人化は本当に必要か?」
NPO法人にする目的や将来のビジョンをしっかり考え、そういった視点で法人化を検討してみてください。
もちろん、私も相談にのります。
お気軽にご相談にお越しください。