一般社団法人とは|初心者にもわかりやすく徹底解説!

はじめまして。

クルーズ行政書士事務所の太田です。

知人、友人から一般社団法人の設立を勧められたものの、「そもそもどういう組織なの?」と疑問を持たれた方向けに、「一般社団法人とは?」について、初心者にもわかりやすく徹底解説させていただきます。

私は、2011年の創業以来、年間200人以上の相談対応をしております。

一般社団法人の設立や運営に関すること、資格ビジネスの始め方や会員規約の作り方など、お気軽にご相談ください。

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目次

1 一般社団法人を理解する上で重要な3つのポイント

一般社団法人とは、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された社団法人のことです。

一般社団法人は「人」の集まりに対して、法人格を与えました。

法人とは、「人」ではありませんが、契約などができるように法律的に人格が認められたもの。

ちなみに、一般財団法人は「財産」の集まりに対して、法人格を与えたものとなります。

と言ってもなかなか難しい説明ですね。

そこで、まず「一般社団法人を理解する上で重要な3つのポイント」を押さえてみてください。

 

1-1 非営利法人とは何か?よく誤解される3つのこと

一般社団法人の最大の特徴は、「非営利法人」であることです。

しかし、この「非営利」という言葉を多くの方が以下の3点を誤解されています。

  1. 利益を出してはいけない
  2. 給与や報酬をもらってはいけない
  3. 無料もしくは格安でサービスを提供しなければならない。

① 利益を出してはいけない

非営利とは、「営利」ではないということですが、営利=利益ではありません。

ですので、利益を出しもいいのです。

では、

「営利」とはどういう意味なのでしょうか?

それは、「分配(配当)を出す」ということなのです。

営利法人の代表でもある株式会社の仕組みと比較してみましょう。

株式会社の場合は、売上から経費(給与等人件費も経費です)を差し引いて利益が出ると、それを出資者(株主)に配当という形で分配することができます。

つまり会社が儲かれば利益が配当されるので株主は、儲けることができるのです。

それを期待して出資します。

これを法律上では「営利」と呼びます。

つまり、一般社団法人でいう「非営利」とは、事業で利益を出してはいけないということではなく、事業で利益を出してもかまわないが、「分配(配当)してはいけない」ということなのです。

一般社団法人が「非営利」法人ということは、売上から経費(給与等人件費も経費です)を差し引いて利益が出ても、出資者(正会員等)に分配することができません。

配当金を出すことができないのです。

では、出た利益はどうするのか?

利益として余ったお金は、翌年度の活動のために繰越します。

② 給与や報酬をもらってはいけない

利益が出たら、次年度従業員の給料や役員報酬を増やすというのも十分ある選択肢です。

給与や報酬についても誤解されがちで、

「給料もらっていいんですか?」

とか

「給料払っていいんですか?」

という電話がたまにかかってきます。

非営利活動と聞くとボランティア活動のイメージがあり、給与や報酬がもらえないと思われるかもしれません。

しかしもちろん、労働に見合った給料をもらうことはできますし、もらわなければ、その働いている人の生活は成り立ちません。

なので、働きがいのある職場作りのためにも、きちんとお給料を出してください。

③ 無料もしくは格安でサービスを提供しなければならない

「非営利」という言葉は、「分配してはいけない」ということでしたね。

提供するサービスもきちんと有料にして、利益を出してもいいのです。

むしろ、利益を出さなければ、スタッフに給料も出せず、活動を続けていく事ができません。

私が大学時代に関わった団体は活動停止に追い込まれました。

どれだけすばらしい活動であっても、参加してくれるスタッフや役員に「労働の対価」として人件費を渡せなければ、活動を大きくすることも長続きすることもできません。

安定的に利益を出すことが、魅力的な就職先にもなります。

だからこそ、私は、まず営業としての実績を積むことが先決と思い、社会人を営業からスタートさせました。

あなたにも、20年続くような社会貢献事業をしてほしいと本気で思っています。

『お金を稼ぐ』ことに抵抗がある方もいるかもしれません。

詐欺師のように不良品やないものを売りつけて『お金を稼ぐ』のは確かに問題があります。

しかし、スタッフさんや役員さんにも生活があります。

しっかりとしたキャッシュポイントがなければ事業継続ができません。

あなたのお客様のためにも、正当な利益を出して、長続きする事業を行っていただきたいと思います。

きちんと、収益化できるビジネスモデルが一般社団法人にも求められています。

 

1-2 簡単に設立できる法人

一般社団法人の2つ目のポイントは、簡単に設立できる法人だということです。

「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」は、2008年に施行された法律です。

この法律ができる前は、社団法人という法人が存在しており、今は無くなりました。

なぜそうなったかと言えば、社団法人は元々公益性のある団体を想定して作った法人格だったのです。

しかし、天下りの温床になったり、公益性が少ない団体も出てきたりしたので、きちんと公益性のある法人は「公益社団法人」、公益目的にこだわらず事業を行いたい場合には「一般社団法人」と分けようということになったのです。

この改革により、自由度が高く、しかもそれまでの社団法人に比べ設立が非常に容易な一般社団法人が誕生しました。

また、「営利を目的としない」法人として、特定非営利活動法人(NPO法人)もありますが、こちらと比べても、書類の難易度や必要な人員、設立までの準備期間など、どの項目も簡単に設立できる法人と言えます。

(NPO法人との詳しい違いについては一般社団法人とNPO法人の比較のページを参照)

 

1-3 税制優遇について

一般社団法人の設立相談の中で、「どのような税制優遇はありますか?」ということもよく聞かれます。

そこで、ここでは簡単に税の仕組みについて記載します。

詳しくは税務署や税理士さんにお尋ねください。

国税局のこちらのページ(一般社団法人・一般財団法人と法人税)も参照してみてください。

一般社団法人には、法人税法上の区分として2つに分けられています。

それが、「普通法人型」と「非営利法人型」になります。

少しややこしいのですが、一般社団法人自体は非営利法人なのですが、税区分の名称として「普通法人型」と「非営利法人型」と分けられています。

普通法人型の場合は、全ての所得が課税対象になるのに対し、非営利法人型の場合は、収益事業から生じた所得だけが課税対象となります。

非営利法人型を選択した場合は、収益事業外が非課税となるため、そこが税制優遇されているとも言えます。

その代わりに、非営利法人型の一般社団法人にするには、ある要件をクリアしなければいけません。
そのあたりの詳しい話は、6章でさせていただきます。

ここでは、一旦税制優遇を受けれる場合があるという点をまずは、押さえてください。

普通型法人の場合は、株式会社と同様の税制となります。

 

1章 まとめ

一般社団法人を理解する上で重要な3つのポイント

①非営利法人であること。
非営利とは利益を出さないではなく、配当を出せないということ。

②簡単に設立できる
昔の社団法人やNPO法人よりも簡単。

③税制優遇が受けられる可能性がある
普通型法人と非営利型法人で変わってくる。

まずは、この3点を覚えておいてください。

 

2 一般社団法人と他の法人格との違い

一般社団法人の特徴をつかむには、他の法人と比較することで、より分かりやすくなります。

あなたの事業が、本当に一般社団法人に向いているのか?

株式会社やNPO法人や一般財団法人と迷われている方もよくいらっしゃいます。

そこでここでは、他の法人格との違いを書かせていただきますね。

 

2-1 一般社団法人とNPO法人の3つ違い

一般社団法人とNPO法人では「非営利(利益を分配できない)法人」という点では共通しています。

いろいろ違いもありますが、ここでは代表的な3つの違いを紹介します。

 

*一般社団法人の場合
<公証役場での定款認証>
認証手数料⇒5万円

<法務局への登記申請>
登録免許税⇒6万円

*NPO法人の場合
NPO法人の場合は、認証手数料や登録免許税がかかりません。

 

それぞれの準備度合いによっても違うので一概に言えませんが、

一般社団法人:2~4週間

NPO法人:4~6か月

となります。

 

*一般社団法人の場合
・社員2名以上
・役員:理事1名以上

*NPO法人の場合
・社員10名以上
・役員:理事3名以上、監事1名以上

*社員は役員(理事・監事)を兼ねることができます。

 

NPO法人設立の相談者が、一般社団法人設立に変更される理由で最も多いのが、この「人数がそろえられない」ということです(統計ではなく、私の感覚ですが)。

起業時に10名の仲間を集めるのが難しいため、最低2名からスタートできる一般社団法人を選ばれます。

一般社団法人よりNPO法人の方がより公益性の高さを求められますので、法人化の条件が厳しくなっています。

一般社団法人とNPO法人の違いについて詳細を知りたい方は、こちらのページ⇒一般社団法人とNPO法人の比較でご確認ください。

 

2-2 一般社団法人と株式会社との違い

一般社団法人と株式会社の最大の違いは、一般社団法人が「非営利」活動であり、株式会社が「営利」活動であるということです。

他にもいろいろと違いがありますが、ここでは代表的な3つに違いについて書かせていただきます。

 

*一般社団法人の場合
<公証役場での定款認証>
認証手数料⇒5万円

<法務局への登記申請>
登録免許税⇒6万円

*株式会社の場合
<公証役場での定款認証>
認証手数料⇒3万円から5万円(資本金額によって異なる)
定款の収入印紙代⇒4万円(電子定款の場合は不要)

<法務局への登記申請>
登録免許税⇒15万円~(15万円または資本金の0.7%の金額の、高い方となります)

 

一般社団法人の設立にかかわる最低人数は2名、株式会社の場合は1名です。

*一般社団法人の場合

「社員2名以上理事が1名以上」必要です。

社員と理事を兼ねることができるので、最低人数は2名となります。

*株式会社の場合

「株主が1名以上取締役が1名以上」必要です。

株主と取締役は兼ねられることから、最低人数は1名となります。

 

株式会社の場合は、全ての所得が課税対象となります。

(「所得」とは収入から経費を引いたものです)

一方、一般社団法人の場合は、の以下の2種類があります。

・全ての所得が課税対象となる「普通型一般社団法人」

・収益事業から生じた所得が課税対象となる「非営利型一般社団法人」

株式会社と普通型一般社団法人は、全ての所得が課税対象となる点で同じです。

非営利型一般社団法人は、「収益事業」と「収益事業外」と会計を2つに分けて、収益事業から生じた所得のみが課税対象となる点で違います。(すなわち、収益事業外は非課税)

一般社団法人と株式会社の違いについて詳細を知りたい方は、こちらのページ⇒一般社団法人と株式会社の比較でご確認ください。

 

2-3 一般社団法人と一般財団法人との違い

一般社団法人と一般財団法人は、名前も少し似ていて、どっちがどのようなものなのか、はっきり区別がつきにくいと思います。

結論から言うと、

「人の集まりに対しての法人格が、一般社団法人」

「人」が集まって活動したり、サービスを提供したりします。

それに対して、

「お金の集まりに対しての法人格が、一般財団法人」

人が「お金」を持って集まって、その「お金」を運用した活動をしています。

 

設立時の基本財産って?

一般財団の場合、設立時に設立者(設立者が二人以上の場合は、各設立者)は300万円以上の「財産」が必要です。

そもそも一般財団法人は、このお金や資産を、ある目的の下に運用するためにつくられる法人のため、このような少し高いハードルがあります。

集められた「財産」に対して法人格が与えられるのです。

一般社団法人には、このような基本財産に関する決まりはありません。

 

*一般社団法人の場合
一般社団法人の場合、社員2名以上、理事1名以上いれば設立できます。

さらに、2名の社員のうち1名が理事を兼ねることができるため、実質最低2人いれば、一般社団法人を立ち上げることができるのです。

*一般財団法人の場合

一般財団の場合、設立人1名、理事3名、評議員3名、監事1名が必要です。

設立者が理事などの役職にもつけるため、最低7名必要ということになります。

一般社団法人と一般財団法人の違いについて詳細を知りたい方は、こちらのページ⇒一般社団法人と一般財団法人の比較でご確認ください。

 

2-4 一般社団法人と公益社団法人との違い

一般社団法人が公益認定を受けたものが、公益社団法人です。

公益社団法人には、一般社団法人と比べて社会的信用の高さや税制の優遇などのメリットがありますが、そのぶん厳しい審査があります。

一般社団法人のように自由な事業は認められず、行政庁への定期報告義務や立入検査など、運営する上での負担が大きくなります。

公益社団法人としての義務を怠ると、公益認定が取消される可能性もあります。

ご自身が目指す事業には、どちらが向いているのか?

メリットだけではなくデメリットもきちんと見極めた上で、最善の選択をしてください。

一般社団法人と公益社団法人の違いについて詳細を知りたい方は、こちらのページ⇒一般社団法人と公益社団法人の比較でご確認ください。

 

2章 まとめ

それぞれの法人にメリット・デメリットがありますが、大切なのは「設立後にどういう活動をしたいか」です。

あなたの活動内容をお聞かせいただければ、あなたに適した法人格のアドバイスをさせていただきます。

 

3 一般社団法人の組織について

一般社団法人の設立を検討するならば、どういった組織なのかを知っておく必要があります。

社員や理事ってどんな人?

社員総会ってどんなことするの?

といった質問にお答えすべく、ここでは一般社団法人の組織について書かせていただきますね。

 

3-1 社員とは?

一般社団法人を設立するには、社員が2名以上必要です。

では、その「社員」とはどういう人なのでしょうか?

日常会話で社員というと、会社で働いてお金をもらう人を指しますが、ここでの社員はまったく違う意味で使われていますので、要注意です!

一般社団法人でいう「社員」とは、総会で議決権を有する人のことをさします。

株式会社で言う「株主」の方がイメージ的に近いかもしれません。

「正会員」という呼ばれ方をすることもあります。

設立時には2名以上の社員が必要ですが、人数さえいればと簡単に社員を決めるのはオススメしません。

設立後の運営をスムーズにするために、社員の人選は慎重に行ってください。

社員について詳しくはこちら⇒一般社団法人の社員とは|その役割と責任について

 

3-2 社員総会とは?

社員総会は、一般社団法人における意思決定機関です。

株式会社でいうところの株主総会のようなものです。

社員総会は全ての社員で構成され、社員は原則一人一個の議決権を持ちます。

一般社団法人の運営や管理、また、法律に関する事項など、法人に関する一切の決定権を持ちます。

法人の運営責任者である、理事の任命や解任を決めるのも社員総会。

とても大切な機関となりますので、本格的に設立を検討される際は、こちらのページ⇒社員総会とは?もしっかり読んでみてください。

 

3-3 理事とは?

理事とは、一般社団法人を運営する人のことです。

株式会社における取締役のような立場と考えるとよいでしょう。

一般社団法人の理事は最低1人必要で、上限はありません。

社員は法人でもOKですが、理事は個人のみです。

一般社団法人には、社員から構成される社員総会と、理事を必ず置かなければなりません。

 

「理事と社員では、どちらの立場が上なの?」

という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

理事は、社員総会の決議を経て決定するので、理事の任命権は社員が握っていると言えます。

「人事任命権を持っている」という意味では、社員の方が立場は上かもしれませんが、それぞれに役割があって責務が分担されているという認識でいいでしょう。

 

「社員と理事を兼ねることはできますか?」

とよく質問されます。

結論から言えば、社員と理事を兼ねることは可能です。

私が設立サポートをしてきた中では、理事と社員を兼ねるケースはかなり多いです。

一般社団法人を最低人数で設立する場合は、あなたが社員と理事となり、もうひとり社員になる人を見つけてくればOKです。

「親族でも大丈夫ですか?」もよく聞かれますが、親族でも大丈夫です。

ただ、非営利徹底型の一般社団法人にすることをご検討されている場合は、親族が1/3以下という規定がありますので、要注意です。

理事についてくわしくはこちら⇒一般社団法人の理事とは|その役割と責任

 

3-4 理事会とは

3名以上の理事と1名以上の監事から成るもので、一般社団法人の業務の意思決定を行います。

ただ、一般社団法人に理事は必ず必要ですが、理事会は必須ではなく、理事会があるのとないのでは理事個人の業務内容が変わってきます。

原則3ヶ月に1回開催しなければいけませんが、それが難しい場合は1年に2回と定款に定めることもできます。

 

理事会が業務の意思決定を、代表理事・業務執行理事が業務の遂行をします。

決定をする理事と、それを実行する理事の役割が別れることになり、代表理事や業務執行理事以外の理事は、法人の意思決定にのみ関わることとなります。

 

理事の過半数をもって、一般社団法人の決定・業務を遂行することができます。

 

理事会を置くメリット・デメリットなど、理事会についての詳細はこちら⇒理事会の役割とメリット・デメリット

 

3-5 監事とは

一般社団法人の監事は、理事の業務監査と会計監査を行い、監査報告を作成します。

理事の不正が分かった場合は、理事会や社員総会に報告する義務があります。

理事会に出席し、必要な場合は理事会を招集することも可能です。

理事会非設置の一般社団法人の場合は、監事を置くかは法人の自由です。

しかし理事会を設置する場合は、必ず1名以上選任しなければいけません。

監事の人選方法など、監事について詳細はこちら⇒一般社団法人の監事とは|その役割と責任について

 

3章 まとめ

一般社団法人の組織については、なかなか文章を読んでも理解が難しいところでもあります。

自分の理解が正しいのか、あやふやな不安がある方は、私に相談してみてください。

「あ~そういうことか」とスッキリされる方が多いです。

今までのお客様の事例を元に、あなの今後の展開に合わせた人選等のアドバイスをさせていただきます。

 

4 一般社団法人の設立要件について

一般社団法人を設立するには、法律で定められた要件をクリアする必要があります。

ここでは、どんな要件があるのか、代表的なものを書かせていただいています。

 

4-1 人的要件

一般社団法人を設立する時には、クリアしておかないといけない条件があります。

まずはどのような「人」が必要なのかをみていきましょう。

 

設立社員が2名以上必要

*法人でもOK

 

ただ、この「社員」という言葉を誤解している人が多いので要注意です。

社員について詳しくはこちら⇒一般社団法人の社員とは|その役割と責任について

社員2名は親族でも可能ですので、ご夫婦や兄弟、親子でも設立することができます。

私がサポートしてきた方の中には、すでに株式会社をお持ちで、社員を「株式会社」と「自分」という形で設立されたケースもあります。

 

理事が1名以上必要

理事会を設置する場合には3人以上必要

*法人はNG(個人のみ)

 

理事というのは、一般社団法人の役員で運営を任される、株式会社で言う取締役のようなものです。

理事についてくわしくはこちら⇒一般社団法人の理事とは|その役割と責任

 

4-2 場所的要件

一般社団法人は、「主たる事務所の所在地」を登記する必要があります。

株式会社の場合だと「本店所在地」ですね。

この「主たる事務所の所在地」は法務局で登記されますので、登記事項として誰でも閲覧可能となります。

事務所の住所に関する注意点はこちらのページ

 

4-3 法人名称について

一般社団法人設立の相談を頂く中で、一般社団法人名称についてご相談をよく頂きます。

ここでは、一般社団法人の名称を決める際の注意点についてお伝えします。

(1)「一般社団法人」と入れる

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の第5条に「一般社団法人又は一般財団法人は、その種類に従い、その名称中に一般社団法人又は一般財団法人という文字を用いなければならない」と規定されています。

そのため、「一般社団法人」と名称のどこかに入れる必要があります。

 

(2)同一名称の制限について

よく聞かれる質問で、考えていた一般社団法人名称が先に使われていたけれど、同じ法人名称でもいいですか?というものがあります。

現在は、同一住所で同一名称が禁止されています。

つまり違う住所であれば、同じ法人名称でも一般社団法人の設立登記は出来てしまうわけですが、それが事業的にOKかというと別問題です。

 

(3)一般社団法人で利用できる文字

一般社団法人の名称で使用できる文字には決まりがあります。

以下の文字以外は使えません。

 

漢字・ひらがな・カタカナ・数字・アルファベット・記号

 

記号は使えるものに制限があります。

一般社団法人の法人名称に使えるものは以下の通りです。

 

「&」(アンド)、「’」(アポストロフィ)、「,」(コンマ)、「–」(ハイフン)、「.」(ピリオド)、「・」(中点)

 

(4)不正目的による制限

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律の第7条に、「何人も、不正の目的をもって、他の一般社団法人又は一般財団法人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。」とあります。

また、第2項には、「前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって事業に係る利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある一般社団法人又は一般財団法人は、その利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。」とあります。

同じような名称を使う場合は、あとあとトラブルの元にもなりかねませんので要注意です。

商標で守られていることもあるので、事前にしっかり調べておきましょう。

私はこれまでに、かなりの数の一般社団法人設立時のネーミング相談を受けてきまして、私がご提案した名称を「それ、そのままいただいていいですか」と決められる方が多いです。

もしも名称に悩まれているようでしたら、ご相談ください。

法人名称についてくわしくはこちら⇒法人名称を決める際の注意点

 

4章 まとめ

一般社団法人を設立するための要件は、比較的容易にクリアできます。

まずは、人的要件である「社員」2名以上、「理事」1名以上をクリアするよう人選を考えてみてください。

 

5 一般社団法人が活用される事例

「一般社団法人ってどのような事業が多いですか?」

「一般社団法人の事例を教えてください!」

と、相談でよく言われます。

一般社団法人は非営利法人ですが、NPO法人と違い事業分野に制限がありません。

行政からの監査もありませんので、自由に収益事業を行うことができます。

また、個人や任意団体として活動するより社会的信用も上がります。

では、このような特徴をもつ一般社団法人は、どのような事業に向いているのでしょうか?

今まで、私がサポートしてきたいくつかの事業を紹介させていただきます。

 

5-1 資格ビジネス

私に一般社団法人設立のご相談に来られる中で、一番多いのが「資格ビジネス」を考えておられる方です。

「これまでの知識や経験を体系化し、多くの方に広めたい」

「自分のスキルが広まることで、社会に役立ちたい」

という想いから、ご相談に来られます。

この「資格ビジネス」がどういうものかというと、一般的には、まずはご自分のスキルを体系化し講座を開催します。

講座を受講し終わった方に対して、資格を発行します。

その講座を受講するだけでOK、または試験合格者は「資格保有者」を名乗ることできます。

ソムリエや漢字検定など受講者の仕事に役立てるものから、温泉や夜景など趣味を極めたい方向けの資格もあります。

また、講師養成講座を開催する場合もあります。

その場合、講師資格取得者は、今度は自分が講師としてスキルを広めていくことができるのです。

武道や茶道の「免許皆伝」のようなものですね。

このような資格発行は、法人化せずに任意団体でも可能です。

しかし、任意団体では受講料の振込先口座などが個人名のため、受講生からの信用度が下がってしまいます。

そこで、法人化して受講希望者や社会への信用度を高めたいと皆さん考えられます。

株式会社でもいいけれど、一般的に「利益ばかりを求めない」「社会貢献度が高い」というイメージの強い一般社団法人を選ばれるケースが多いのです。

 

5-2 教育事業

教育事業を行う団体にとって、何より重要なのは「社会的信用」でしょう。

任意団体と法人では、社会的信用度はかなり違います。

一般社団法人化のご相談に来られる方からよくお聞きするのが、

「営業に行ったときに、法人化しているか聞かれた」

「まずは法人化してから契約しましょうと言われた」

「話の流れで法人化しているか聞かれて、思わず現在申請中ですと言ってしまった」

と言ったお声です。

得意先や協賛先で「法人化しているか」と聞かれるケースが多いようです。

個人を相手にするビジネスでは多くはないでしょうが、相手が行政や法人の場合は特に信用度を問われます。

行政は、委託対象を法人に限定しているところも多いようです。

 

5-3 介護事業

これから高齢化社会になっていくことを考え、介護事業を始めようと思われる方も多いでしょう。

介護サービスにもいくつか種類がありますが、その中でも介護保険の適用を受けるサービスを提供する事業者を「指定事業者」といいます。

介護保険サービスごとの指定基準「人員基準」「設備基準」「運営基準」を満たすことで申請可能となり、その後の審査を通過すると「指定事業者」を名乗ることができます。

指定基準はサービスの種類によって異なりますが、基本的に「介護保険の事業者指定」を受けられるのは、法人だけです。(特例もあります)

法人ならば、株式会社・合同会社などの営利法人でも構いませんが、介護事業を通じて社会に貢献をしたいという想いから、非営利法人である一般社団法人を選ぶ方も多いです。

また、収益事業以外の寄付金等の収入については非課税となりますから、介護事業以外に寄付金によるボランティア事業等も積極的に行う場合は、非営利法人がおすすめです。

 

5-4 スポーツ団体

スポーツ団体を一般社団法人化したいというご依頼は結構多いです。

地域のサッカー教室などのスポーツ教室も最近は増えつつあります。

そのスポーツの協会を作るメリットはたくさんありますが、税制優遇のメリットを活かしたいというところが多いように思います。

また、任意団体より法人化している方が、社会的信用はぐっと高まるでしょう。

普及活動や運営費のために、寄付や助成金・補助金を必要とする場合は、法人の方が有利になる場合もあります。

その他、法人化することで業界全体のルールを定めることができ、責任の所在も明確になりますので、今後その団体を大きくしていきたいとお考えの場合も、法人化をおすすめします。

 

5-5 学術、研究団体

学術、研究団体で重要なものは、やはり研究費でしょう。

研究費捻出のため、スポンサーに寄付や協賛を依頼する際にも、一般社団法人は任意団体よりも信用が高く、アピールになります。

寄付を依頼した先方から法人格が求められたり、法人格を持っていることが条件だったりするケースもあります。

また任意団体では法人格がないので、法人名義の銀行口座が開設できません。

その場合、代表者の個人名義の口座に振り込むことになりますので、スポンサーにとっても寄付をするのに躊躇するかと思われます。

寄付や協賛をより多く集めたいビジネスモデルの場合は、「公益社団法人」への移行も視野に入れて設立するといいでしょう。

公益社団法人になると、寄付する側が寄付控除の特典を受けることができます。

例えば寄付した人が個人であれば、確定申告の時に寄付控除でお金が一部戻ってきたり、法人の場合は、普通のNPO法人や一般社団法人へ寄付するよりも寄付控除の受けられる上限枠が広がったりするので、寄付や協賛先から選ばれる可能性が高まります。

もちろん寄付控除を受けるためにその団体に寄付するのは本末転倒ですが、公益社団法人になるためには「公益認定」を受けなければならず、それが信用力も後押ししてくれます。

この「公益社団法人」はいきなり作ることはできず、一旦一般社団法人を設立してから移行する形となります。

「一般社団法人を設立して何年後に『公益認定』を受けられるのですか?」

という質問をよく受けますが、「公益認定」は、未来の事業計画に対して認定するので、「何年活動しているか」など過去の実績は問われません。

「寄付」を多く集めたい団体は、「公益認定」を当初から計画して一般社団法人を設立すると、「公益認定」をクリアしやすいので、スムーズに移行できる場合が多いです。

 

5-6 業界団体

同じ業種で団体を作り、情報の共有やルールの策定、業界全体のスキルアップを計るため、一般社団法人を設立する場合も多くあります。

その場合、「社員」をそれぞれの会社が1票を持ち、「理事」を各社から1名ずつ出すといった形で運用されることが多いです。

交流会などで親睦を深めたり、研修・勉強会を開催したりなどの他、行政に対しての提言なども任意団体よりは社会的信用が高いため、スムーズになります。

 

5-7 異業種連携事業

異業種の会社が組んで、新規事業を立ち上げる際に一般社団法人が活用される場合があります。

例えば、弁護士・税理士・司法書士・行政書士・葬儀会社などが組んで、「一般社団法人相続協会」を設立したとします。(法人名称は仮名)

そのチームで、「揉めない相続のための準備セミナー」を開催したり、「相続無料相談会」などを開催し、見込み客を集めた後、自分たちの本業のビジネスにつなげていくと言ったスキームを作ることもできます。

1社だけでなく、複数社がコラボすることでお客様により高い付加価値が提供でき、新しいビジネスモデルが作れる可能性を秘めています。

 

5-8 イベント事業

長期や定期的なイベントを開催される場合、集客・広告・経費・スタッフ管理など、運営を円滑にしたい場合にも、一般社団法人化をされる団体が多いです。

とくに、地域活性化としての観光業の振興・観光名所の知名度アップ、伝統工芸や地元名産の物販などの運営団体は、法人化のメリットが多くあります。

まずは、イベント運営費として助成金・補助金などを申請する際、法人化している方が受給可能な助成金・補助金の種類が増えます。

寄付を集める場合も、任意団体では口座名義が個人のものとなるため信用度が下がります。

法人にもいくつか種類がありますが、株式会社などの営利法人より、非営利法人である一般社団法人の方が、一般的に「社会的貢献度の高い団体」というイメージが強いため、寄付が集まりやすいでしょう。

また、地域活性化イベントは行政との繋がりが必要なケースが多いため、法人化していないと契約ができないことがあります。

 

5-9 社会貢献事業

「ソーシャルビジネス」という言葉をご存知でしょうか?

簡単にいえば「社会的課題を解決することを最大の目的としたビジネス」のことです。

利益を上げ続けるビジネスモデルをつくることで、社会問題の解決に継続的に関与できるメリットがあります。

「人や社会のために」というと、普通の会社やNPO法人と変わらない気もしますが、解決の緊急性・難易度が高く、まだ手をつけられていない課題解決を最大の目的としているあたりが、通常のビジネスとの違いでしょうか。

ちなみに経済産業省によれば、

「環境保護、高齢者・障がい者の介護・福祉から、子育て支援、まちづくり、観光等に至るまで、多種多様な社会課題」の解決のために、「住民、NPO、企業など、様々な主体が協力しながらビジネスの手法を活用して取り組む」

ことが、ソーシャルビジネスやコミュニティビジネスであると説明されています。

地域の課題に取り組むという意味で、コミュニティビジネスと呼ばれることもあります。

利益を最大化することが一番の目標ではなく、社会の課題を解決するための資金を稼ぐために収益を求めるという点が、ソーシャルビジネスの特徴といえます。

このあたりは、一般社団法人やNPO法人の設立をお考えになる方は共感できる部分もあるのではないでしょうか。

 

5章 まとめ

このように、一般社団法人と一口に言っても、いろんな形があります。

最近は、企業のCSR活動もずいぶん定着してきました。

CSRとは、企業の社会的責任のことです。

具体的にどういう意味かは、国や企業によって考え方にも差がありますが、おおむね「企業は短期的な利益を追求するだけでなく、主体的に社会に貢献する活動もする必要がある」といった意味です。

単に利潤を追求するだけでなく、社会に貢献する姿勢というのが、一般の企業にも求められるようになったということです。

私は、大学に入学して、子どもとキャンプ活動を行うボランティア活動とめぐり合いました。

私は最初に「キャンプ活動は目的ではなく、子ども成長のための手段である」と教えられました。

グループ活動を通して人間関係や絆を深めることを一番大切な価値として考え、表面的なつながりではなく、「絆」の大切さを子どもに伝えるために活動をしていました。

その結果子どもの成長を感じ、笑顔を見ることが喜びとなりました。

しかし1年もたたず、赤字を理由に活動を停止すると宣言されました。

こんなにやりがいがあって、子どもの成長という社会に貢献できる活動なのに、活動できない。

当時大学1年生でしたが、自分の生きがいを取られたようなショックを受けました。

この経験からも、人や社会に貢献できるのに資金がないために継続できない、という事態を防ぐために、ソーシャルビジネスというのは注目に値する事業形態だと感じています。

社会に貢献し人に感謝されながら、収益もきちんと上げていかないと続けることができません。

人のためにもなり、収益も確保する、ここが難しいところですが、これを達成できなければ思いも実現できません。

私は常々セミーや私のお客様に、社会起業においてミッションや思いといった内面的なものが大切というお話をしてきました。

一般社団法人を立ち上げた後はいろいろ大変なこともあるかと思います。

すべてが順風満帆という方は少ないでしょう。

そこで踏ん張れるかどうかは、あなたの内面の想いの強さだと考えます。

・私はこの商品を広めて多くの人の役に立ちたい
・私はこのサービスを通じて社会貢献したい
・私はこの価値を伝えたい

そういうことを考え、一般社団法人を立ち上げたときの自分と向き合うことが大切だと考えています。

もちろん、ここでソーシャルビジネスが最も価値がある、と言いたいわけではありません。

ボランティアもソーシャルビジネスも、株式会社も一般社団法人も、どれも必要とされているから存在するわけで、どれかが一番いいなんてことはありません。

人に感謝されながら収益化を図ることが大切です、ということをお伝えしたかったのです。

そして、サービスや商品には自信があるけど、継続性を維持するのに苦労している、という方の助けになりたいと考えています。

 

6 知らないと損する非営利型法人について

非営利型の一般社団法人を設立して、失敗するケースがあります。

そういうお話をすると、みなさん「えっ」と驚かれます。

一見お得な非営利型の一般社団法人について、ここでは詳しく解説していきます。

 

6-1 非営利型の一般社団法人の要件

社団法人や財団法人は、公益認定を受けた公益社団法人・公益財団法人と、公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人に分かれます。

公益認定とは、公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(公益法人認定法)に基づいて、学術や芸術などの振興などの目的で、広く社会一般のためになる事業を主にしている法人が認定されます。

非営利型の一般社団法人はこれとは違います。

公益社団法人でない一般社団法人のうち、以下のAまたはB条件を満たすと、自動的に非営利型一般社団法人となります。

 

(1)剰余金の分配を行わないことを定款に定めていること。

(2)上記1及び2の定款の定めに違反する行為(上記1、2及び下記4の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを含みます。)を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。

(3)解散したときは、残余財産を国・地方公共団体や一定の公益的な団体に贈与することを定款に定めていること。

(4)各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の 1 以下であること。

これらの四つの条件を満たす場合、「非営利性が徹底された法人」として、非営利型法人に分類されます。

 

 

(1)会員に共通する利益を図る活動を行うことを目的としていること。

(2)定款等に会費の定めがあること。

(3)主たる事業として収益事業を行っていないこと。

(4)定款に特定の個人又は団体に剰余金の分配を行うことを定めていないこと。

(5)解散したときにその残余財産を特定の個人又は団体に帰属させることを定款に定めていないこと。

(6)上記1から5まで及び下記7の要件に該当していた期間において、特定の個人又は団体に特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。

(7)各理事について、理事とその理事の親族等である理事の合計数が、理事の総数の3分の 1 以下であること。

この7つの条件を満たしている場合もまた、「共益的活動を目的とする法人」として、非営利型法人として認められます。

(国税庁:一 般 社 団 法 人 ・ 一 般 財 団 法 人 と 法人税 より抜粋)

Aの4つの条件、またはBの7つの条件のどちらかを満たしていれば、役所での特別の手続きを経ることなく、非営利型の一般社団法人に分類されます。

しかし、これらの条件のうち一つでも満たさない状態になると、普通法人にも自動的に戻ってしまうのでご注意ください。

 

6-2 34の収益事業とは

非営利型の一般社団法人となる場合、税制上のメリットがあります。

そのメリットは、「収益事業」に当たらない事業に関しては非課税となること。

ちなみに、収益事業には以下の34種類があります。

 

1.物品販売業 2.不動産販売業 3.金融貸付業 4.物品貸付業 5.不動産貸付業 6.製造 7.通信業 8.運送業 9.倉庫業 10.請負業 11.印刷業 12.出版業 13.写真業 14.席貸業 15.旅館業 16.料理店業その他の飲食店業 17.周旋業 18.代理業 19.仲立業 20.問屋業 21.鉱業 22.土石採取業 23.浴場業 24.理容業 25.美容業 26.興行業 27.遊技所業 28.遊覧所業 29.医療保健業 30.技芸教授を行う事業 31.駐車場業 32.信用保証業 33.無体財産権の提供等を行う事業 34.労働者派遣業

国税庁:一 般 社 団 法 人 ・ 一 般 財 団 法 人 と 法人税のPDFのP3参照

 

34事業の内、ご自身の事業がどれに当てはまるかはっきりわからない、という方もいらっしゃるでしょう。

事業内容がどれにあたるかは、管轄の税務署や税理士さんに相談してみてください。

最終的に収益事業か否かを判断するのは税務署ですので、きちんと税理士さんに税務署に話してもらえるようにするためにも、まず税理士さんにあなたの事業内容をきちんと理解してもらうことをオススメします。

 

6-3 非営利型で失敗してしまうケース

非営利型の一般社団法人には税制優遇があるため、法人設立の際に非営利型を視野に入れてご相談に来られるお客様も多いです。

非営利型の一般社団法人は「収益事業」と「収益事業ではない事業」とで、会計が二つに分かれることになります。

法人税法上は「公益法人等」として扱われ、34ある「収益事業」を行った際の所得にのみ税金がかかります。

一方、普通型の一般社団法人は事業所得の全てに税金がかかります。

寄付や会員からの会費を主な収入源とする場合、これらには税金がかからないので、非営利型の一般社団法人がおすすめと言えます。

ただし、必ずしも非営利型にすれば税金がお得になるというわけではありません。

例えば、収益事業が黒字、収益事業外が赤字の場合、収益事業の黒字部分に課税されます。

本来一つの会計にしていた場合、収益事業外の赤字が収益事業の黒字と相殺されるので、黒字額は小さくなるため、非営利型の一般社団法人にしていたために、損をしてしまいます。

おおざっぱにいえば、収益事業が赤字、収益外事業が黒字なら節税になる、という具合です。

税金の詳しい話については、税理士にお尋ねください。

 

6-4 非営利型を相続税のがれに悪用する例

親から子供へ財産を受け継ぐと「相続税」がかかります。

現金や貯金はもちろん、株式や不動産、骨董品なども課税対象です。

これらの総額が大きいと、当然相続税の金額も大きいものになります。

そこで非営利型の一般社団法人を使って、相続税を払わずに財産を相続するやり方を使う人達が現れました。

しかし、この方法は行き過ぎた節税対策として平成30年に税制改正がありました。

一般社団法人の代表理事が亡くなった時に、

・一般社団法人の役員を務める親族が、役員の総数の3分の1を超えている

・代表理事が亡くなる5年前に、一般社団法人の役員を親族の過半数を超えている期間が3年以上あった

このような場合には、一般社団法人に相続税が課せられます。

(平成30年3月31日以前に代表理事が亡くなった場合は、相続税の課税対象とはなりません)

また死亡時の相続税を減らすために、個人が生前に親族に対して財産を贈与した場合、贈与税が課税されます。

しかし贈与税は個人を対象とする税金で、法人には課税されません。

そのため財産を一般社団法人に贈与した後に、子供に一般社団法人の役員を引き継がせるという方法もありました。

これも税制の改正により、個人が一般社団法人へ財産を贈与したことによって相続税が不当に減少すると認められた時は、贈与税が課税されます。

こちらも詳しくは、税理士さんにご確認ください。

 

6章 まとめ

非営利型の一般社団法人の設立をご検討の場合には、必ず税務署や税理士さんに相談されることをオススメしています。

6章の内容は少し難しい所もありますので、ご不明点は相談などを活用してみてください。

 

7 一般社団法人を設立するまでの流れ

ここでは、一般社団法人を設立するまでの流れを押さえていきます。

まずは、ざっと大まかな流れを把握しましょう。

 

STEP1 必要事項の決定

一般社団法人を設立するには、決めておくべきことがたくさんあります。

①法人名称

②主たる事務所の所在地

③決算時期
個人事業主の場合は、1月始まりの12月終わりで、3月に確定申告という流れが決まっています。

一方、一般社団法人の場合は、決算月を自分たちで決めることが可能です。

決算期の決め方は、消費税の事や、売上のピークアンダーピークがあったり、設立時期との兼ね合いがあったりしますので、無料相談の中でも相談に上がるテーマとなります。

④設立時社員

⑤設立時理事

⑥事業内容や目的を決める
一般社団法人の目的や事業内容を決める必要があります。

目的や事業内容は登記簿謄本に記載されることになります。

よくある質問で

「ここで書いてあることしか行ってはいけないのですか?」

と聞かれます。

定款には通常最後に「その他法人設立の目的を達成するための事業」といった、汎用的な文言を入れるので、あまりシビアに考える必要はありませんが、事業を行うために許認可が必要な場合があります。

その許認可を取るために「定款に定められた文言がなければ、許可がおりない」ということがあります。

あなたが行おうとしている事業に許認可が必要なのかどうかを確認した上で、定款の文言を決めてください。

なかなかご自分一人で全てを決めるのは難しい部分もありますので、一般社団法人化を決められましたら、その決めごとについてご相談いただきながら、ひとつひとつ決めて行きましょう。

 

STEP.2 定款等書類作成

一般社団法人設立の際に必要な書類は、以下のようなものです。

定款
実質的支配者となるべき者の申告書
各役員(理事・監事)の就任承諾書
主たる事務所所在場所の決定に関する決議書
設立登記申請書
印鑑届出書
印鑑カード交付申請書

 

一般社団法人設立の際に、一番大事な書類は「定款」です。

定款とは法人の「決まり事」です。

一般社団法人は運営していく中で、役員の変更など組織内で設立時から変わっていくことも多いでしょう。

その時の運営の指針となるのが「定款」です。

そこで、定款の内容で法律違反などが行われることのないよう、公的権限を有する公証人の認証を受ける必要があります。

定款には「法人名称」「事業目的」「主たる事業所所在地」の他、「事業年度」などの運営上の決まり、役員や社員への決まりなどを記載します。

定款の絶対的記載事項についてはこちら

「実質的支配者となるべき者の申告書」は、公証人法施行規則の一部が改正されたことにより、2018年11月30日から株式会社・一般社団法人・一般財団法人の定款認証の際に必要となった書類です。

暴力団員等による法人の不正使用の抑制のために改正されました。

一般社団法人での「実質的支配者」は、基本的に代表理事となります。

「印鑑届出書」で法人の実印の印影を登録、「印鑑カード交付申請書」で法人の印鑑証明書を発行するために必要なカードを交付してもらいます。

定款作成後は、公証役場で定款認証を行いますが、設立時社員全員が行かなければいけません。

ただし、それが難しい場合は代理人を立てることができます。

その場合は設立時社員全員の実印を押印した、代理人への委任状が必要です。

 

STEP.3 法人印の準備

一般社団法人の登記を法務局に申請する際に、一般社団法人の実印も登録するため、登記前には実印を準備しておく必要があります。

一般社団法人の名称が決まりましたら、早目に印鑑を作成しましょう。

一般社団法人の設立時には、「実印」「銀行印」「角印」の3本をまとめて作られる方が多いです。

設立の登記だけなら「実印」があれば、大丈夫です。

最近はインターネットで3本セット5千円ぐらいから作成可能です。

実印は、通常は丸い形で周りに「一般社団法人○○」と法人名称が入り、中に「代表理事之印」と書かれたものが多いですが、「1辺が1㎝を越え、3㎝以内で正方形に収まるサイズ」という規格内であれば、丸でなくても大丈夫です。

「一般社団法人の実印はこれ」と登録できれば良いので、極論ご自分の苗字や名前だけの印鑑でも可能です。

金額は印鑑の材質によって変わります。

高級な素材を使えば1万円以上しますが、安いものなら数千円ぐらいで作成できます。

 

STEP.4 定款認証

定款が作成できましたら、公証役場で定款認証を行います。

公証役場は、あなたが設立しようとしている一般社団法人の主たる事務所の所在地のある都道府県の中にある公証役場であればどこでも構いません。

東京で一般社団法人を設立するなら、新宿でも渋谷でも銀座でもどこでもOKです。

いきなり行くのではなく、事前に公証人に定款を見てチェックしてもらい、修正があれば指示してもらいます

公証役場にもよりますが、事前チェックはメールやFAXなどでも可能です。

定款認証の日時は、必ず事前に公証役場に予約をしましょう。

予約なしで行くと長時間待たされたり、事前に定款を確認した担当公証人が不在ということもあります。

定款認証の所要時間は、その時の公証役場の混み具合などにもよりますが、平均15~20分ぐらいです。

定款認証の際には、以下のものが必要です。

 

運転免許証やパスポートなどの本人確認証明書

設立時社員2名の印鑑証明書

 

設立時社員全員が定款認証に行けない場合は、代理人への委任状も必要です。

この場合は、代理人の本人確認証明書が必要になります。

定款認証では、認証手数料と謄本作成料がかかります。

定款の認証手数料は50,000円ですが、謄本作成料は定款のページ枚数等によって違います。

約53,000円あれば大丈夫でしょう。

定款認証後は以下のものを受け取ります。

 

紙の定款の場合⇒法務局へ登記申請する際に提出する謄本用の定款と、法人保存用の定款各1部ずつ

電子定款の場合⇒電子定款の入ったCD-R(紙の定款謄本が必要な場合は、謄本請求用紙を記入して請求できます。事前チェックの際に伝えておくとスムーズでしょう)

 

最近は、テレビ電話で定款認証が可能な公証役場を増えてきました。

希望される場合は、お近くの公証役場が可能かどうか、事前に確認をしてみてください。(公証役場のHPに記載されている場合もあります)

 

STEP.5 法務局へ登記申請

就任承諾書、印鑑届、登記申請書、主たる事務所所在場所の決定に関する決議書等の一般社団法人設立に関する書類が一式揃いましたら、管轄法務局で登記申請を行います。

法務局は、主たる事務所所在地によって管轄が異なります。

必ず事前に管轄法務局を確認してください。

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/kankatsu_index.html

登記申請は登録免許税の60,000円が必要です。

一般社団法人の設立日は、法務局へ申請した日になります。

土日祝は法務局が開いていないので、設立日にすることができませんのでご注意ください。

1/1は設立日にすることができませんが、4/1は年によって設立日として設定出来たりできなかったりします。

設立日はこだわる方も多く大安や一流万倍日が人気ですが、占いなどで決められる方もいらっしゃいます。

 

8 一般社団法人の設立後の事務手続きについて

一般社団法人の設立登記申請後、約1週間~10日ほどで登記が完了し、登記簿謄本を取得できるようになります。

その登記簿謄本を持って、いくつか届け出などの手続きが必要となりますので、そちらを紹介します。

 

8-1 税務署への届け出

一般社団法人の設立後、主たる事務所所在地を管轄する税務署へ法人設立をした旨の届け出が必要です。

書類によって提出期限が違いますので、ご注意ください。

顧問税理士がいる場合は申請代行が可能ですし、よく分からない場合は税務署のHPで確認するか電話で問い合わせてみてください。

非営利型の一般社団法人でも法人住民税がかかりますので、届け出が必要です。

ただし収益事業を行わない場合は、届け出は必要ありません。

(新たに収益事業を始める場合は、収益事業開始届出書を提出しなければいけませんので、ご注意ください)

必ず税務署に提出するのは、以下の書類になります。

 

・法人設立届出書(2ヶ月以内)

・収益事業開始届出書(2ヶ月以内)

・定款のコピー

・登記簿謄本

 

<状況により提出が必要な書類>

従業員がいて給与の支払いがある場合⇒給与支払事務所等の開設届出書 (1ヶ月以内)

確定申告を青色申告で行う場合⇒青色申告の承認申請書(設立3ヶ月後と事業年度終了の日で、早い方の前日まで)

 

また、主たる事務所所在地がある都道府県・市区町村へも、法人設立届出書の提出が必要です。

都道府県・市区町村によって、提出書類の様式や期限が違いますので、管轄の税事務所や市区町村の税金担当窓口にご確認ください。

 

8-2 社会保険の手続き

法人は社会保険に加入することが原則義務づけられているため、一般社団法人も社会保険に加入しなければいけません。

社会保険とは、「年金保険」「雇用保険」「医療保険」「介護保険」「労災保険」の5種類の保険を指します。

個人事業主の場合は、従業員が5名以上いる場合のみ加入義務が発生します。

そのため、従業員がおらず役員のみだと加入義務はないと思われる方もいらっしゃいます。

従業員がいるかどうかに関わらず、法人では役員も社会保険に加入が必要です。

(ただし、役員報酬が「健康保険料と厚生年金が給与から天引き出来ないぐらい少ない」または「ゼロ」の場合は、社会保険に加入することができなくなります)

社会保険への加入は、主たる事業所のある管轄の年金事務所で手続きをします。

「新規適用届」と、厚生年金保険料・健康保険料を算出するための「報酬月額の届け出書」を設立後5日以内に提出が必要です。

その他は登記簿謄本、従業員がいる場合は被保険者資格取得届と賃金台帳なども提出が必要ですので、準備しておきましょう。

金額は、法人からの報酬の合算額に基づいて決まります。

(詳しくは、管轄の年金事務所や社会保険労務士にお問い合わせください)

 

8-3 銀行口座の開設

法務局で登記申請が終わったら、できるだけ早く法人の銀行口座を開設しましょう。

これから法人として事業活動を開始するにあたり、事務所を借りたり報酬の振込み先口座などで必要になるからです。

早目の口座開設のために、必要書類などの準備も早目に進めておきましょう。

以下のようなものが必要になります。(金融機関によって異なりますので、詳細は開設予定の支店へお問い合わせください)

 

銀行印
登記簿謄本
法人印鑑証明書
本人確認ができるもの(運転免許証、パスポートなど)

 

口座の開設は、基本的に主たる事務所の所在地から近い支店で申し込みをしてください。

事務所から遠い支店だと、審査の際に断られることがあります。

また審査中は実態調査のため、抜き打ちで事務所所在地への来訪があることもあります。

最近は口座開設の審査が厳しくなっているため、審査の前に面談がある場合もあります。

インターネットで申し込んだ場合でも、後日支店での面談がある場合もあります。

事業内容や目的などが聞かれますので、口頭で説明できるようにしておきましょう。

以下のような資料も持参すると、よりスムーズに話が進みます。

 

法人番号指定通知書
法人設立届出書のコピー
事務所やバーチャルオフィスなどの賃貸借契約書
事業内容が分かるもの(法人の案内資料、ホームページをプリントアウトしたもの、事業計画書など)

 

創業融資を希望される場合は、事業計画書を作成しておくことをおすすめします。

ネット銀行の場合は、主たる事務所所在地と代表理事の自宅住所宛に、転送不要の書留で書類が郵送されてきます。

転送不要となっている理由は、近年法人を利用した詐欺が増えているため、本人確認を兼ねています。

長期出張などで受け取り期間を過ぎることなどのないよう、ご注意ください。

法人口座は個人口座の開設時より、審査が厳しく期間も長くかかります。

金融機関にもよりますが、審査期間終了後から講座の利用開始までに2~3週間はみておいた方が良いでしょう。

 

8-4 役員変更手続き

一般社団法人を設立する時に、役員の氏名と住所は登記事項になります。

そのため役員の変更があった場合は、主たる事務所を管轄する法務局で役員変更の登記をする必要があります。

役員の変更とは、

役員の任期満了
役員の辞任
役員の追加
役員の死亡
代表理事の住所変更
役員の姓の変更

といった場合です。

上記の中でも忘れがちなのが、役員の任期満了時です。

理事の任期は、原則2年間です。

任期が満了すると退任となりますが、定時社員総会で選任されれば、任期満了後も同じ人が役員を続けることもできます。

ただし同じ人が役員を続行することになっても、任期満了時にはその都度の変更登記の手続きが必要です。

役員変更がないと、この任期満了ごとの変更登記を忘れる方が多いので、ご注意ください。

役員の変更には、まず代表理事が定時社員総会を招集します。

代表理事は、日時、場所、社員総会の目的などを、定時社員総会の日の1週間前までに各社員に通知します。

社員総会では全社員の過半数の出席が必要で、出席した社員の議決権の過半数によって、新役員を決定します。

定時社員総会の日から2週間以内に、主たる事務所を管轄する法務局で、役員変更の登記申請を行います。(期限を過ぎると登記懈怠過料を請求される可能性があります)

役員変更手続きには、以下のような書類が必要です。(変更内容によって変わる場合があります。)

 

定款
社員総会議事録
理事の決議書
役員の就任承諾書
役員の本人確認書類のコピー(運転免許証や住民票、印鑑証明書など)
登記申請書

 

更に、辞任の場合は「辞任届」、死亡の場合は「死亡届」または「法定相続情報一覧図の写し」が必要です。

役員変更の場合の登録免許税は1万円です。

一般社団法人やNPO法人の設立をお考えの方は、まずは、設立事前相談にお申し込みください。

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