一般社団法人の理事とは|その役割と責任

理事とは

理事とは、一般社団法人を運営する人のことです。

株式会社における取締役のような立場と考えるとよいでしょう。

一般社団法人の理事は最低1人必要で、上限はありません。

社員は法人でも可能ですが、理事は個人のみです。

 

一般社団法人には、社員から構成される社員総会と、理事を必ず置かなければなりません。

「理事と社員では、どちらの立場が上なの?」という疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

理事は、社員総会を経て決定するので、理事の任命権は社員が握っていると言えます。

「人事任命権を持っている」という意味では、社員の方が立場は上かもしれませんが、それぞれに役割があって責務が分担されているという認識でいいでしょう。

理事と社員は兼任することもでき、実際に一般社団法人の設立のサポートをする中で、理事と社員を兼ねられるケースはかなり多いです。

一般社団法人を最低人数で設立する場合は、あなたが社員と理事に就任し、もうひとり、社員になる人を見つけてくればOKです。

理事会を設置する場合は、3名以上の理事と1名以上の代表理事が必要です。

(理事会を設置した場合は、監事の選定も必要です)

代表理事は、理事の中から選任されなければいけません。

 

理事の人選方法

 理事は社員に依頼されて任命されるものです。

理事会設置型、非設置型共通で社員総会によって選任されます。

理事会に関しては、こちら⇒理事会の役割とメリットデメリットで詳しくご説明します。

 

下記のいずれかの条件に当てはまる場合、理事にはなれません。

・法人
・成年被後見人、被補佐人、または外国の法令上同様に扱われている者
・一般法人法あるいは関連する法律に違反して刑に処せられ、その執行等を終え2年を経過しない者
・その他の法令に違反し禁固以上の刑に処せられ、その執行等を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者を除く)

 

特に注意しなければならないのは「法人は理事にはなれない」という点です。

一般社団法人の社員は法人でも可能ですが、理事の場合はそれができません。

一般社団法人の理事は「株式会社の取締役」同様のイメージで、その一般社団法人の運営責任者となるため、個人しか就任できません。

 

また実際的な問題としては、委任状などで理事の代理が理事会へ出席することは認められていませんので、理事会へ出席可能な人物でなければ務まらないでしょう。

あとはそれぞれの一般社団法人によりますが、法人の運営に加え、事業内容に対する知見や経験も必要とされる立場であるといえます。

 

その他、私が一般社団法人の設立相談の中でよく受ける質問に「社員と理事を兼ねることはできますか?」があります。

結論から言えば、社員と理事を兼ねることは可能です。

私が設立サポートをしてきた中では、理事と社員を兼ねるケースはかなり多いです。

一般社団法人を最低人数で設立する場合は、あなたが社員と理事に就任し、もうひとり社員になる人を見つけてくればOKです。

「親族でも大丈夫ですか?」もよく聞かれますが、親族でも大丈夫です。

ただ、非営利徹底型の一般社団法人にすることをご検討されている場合は、親族1/3規定がありますので、要注意です。

 

代表理事とは

 代表理事とは、その名の通り、一般社団法人を代表する理事です。

法人を代表して業務を行いますので、代表理事が行ったことは法人が行ったこととみなされます。

この代表理事の選出方法も、理事会を設置しているか否かで変わります。

 

<理事会設置型の一般社団法人の場合>

基本的には理事会で選ばれた1名が、代表理事を務めることとなります。

しかし、理事会を設置していない一般社団法人と同様に、理事全員を代表理事とすることも可能です。

その場合、理事会非設置型の一般社団法人と同様の扱いになります。

 

<理事会非設置型(理事会を設置していない)一般社団法人の場合>

一方、理事会のない一般社団法人なら、

・定款
・定款に定めた方法による理事同士の互選
・社員総会決議

の三つのいずれかの手続きをもって選出することになります。

理事が複数いても、代表理事を一人決め、一般社団法人を代表させることもできます。

また、「代表理事」という役職は、定款上では「理事長」や「会長」と表記することもできます。(登記上では「代表理事」となります)

さらに、任意で副理事長や副会長、専務理事、常務理事といった役職を置くこともできます。

 

理事の任期

一般社団法人の理事の任期は2年以内と決められています。

(短くするのは可能ですが、今までサポートしてきた一般社団法人で2年より短い所はありません)

 

2年後、同じ人が再任することは可能ですが、その場合でも法務局での変更登記の必要があります。

2年というのはあっという間ですので、忘れずに変更登記申請をしてくださいね。

忘れていても、法務局から「2年経ったから手続きするように」といった案内はありませんので、ご注意ください。

 

ちなみに、理事の任期の起算日は、社員総会での選任決議時です。

登記上は、理事に選ばれた人が就任を承諾した日が記載されます。

細かいところですが、これらの日付が違ったりしないようご注意ください。

 

理事が2年以内に解任される場合、社員総会の決議を経ての解任ということになります。

任期を満了していなくても、法人を代表して業務を執行する立場として、法人に相応しくない人物であるなどと判断されれば、解任されます。

また、自らの意志で辞任することも可能です。

 

理事の賠償責任

 理事は一般社団法人の為にリーダーシップを発揮し、定款や社員総会の決議を守って運営していく義務があります。

このような理事がすべき任務をしなかった場合、一般社団法人に対して、その損害を賠償する責任を負います。

 

ただし、以下の方法で免除・制限をすることができます。

・総社員の同意による免除
・社員総会の決議による一部免除
・定款の定めに基づく理事等による一部免除
・定款の定めに基づく契約による外部役員等の責任の制限

 

理事就任に関するリスク

理事は、社員と違って就任に対してリスクがあります。

損害賠償などの請求は基本的には法人に来ますが、法人の運営責任者として最終的には理事に来る場合もあります。

「法人に箔をつけるため、権威のある方に理事を任せたい」という考え方もありますが、依頼する場合はリスクについてもきちんと説明すべきでしょう。

ご自分が依頼された場合も後のトラブルを避けるために、他の理事が信頼できる人か見極めて就任することをおすすめします。

「とりあえず名前貸して」と依頼されるケースも多いですが、その場合はどういう法人かきちんと説明してもらうようにしましょう。

中には、説明してというと逃げてしまう人もいるようです。

 

理事に求められるリーダーシップ

一般的に理事の中の一人を法人の運営代表、「代表理事」とします。(代表理事を決めない場合は、理事全員に代表理事と同じ責任・権限があります)

では、代表理事にはどのような人物を選べば良いでしょうか?

やはり強いリーダーシップ力を持つ人物だと私は考えています。

 

では、リーダーシップとはどんな力でしょうか?

・人をぐいぐい引っ張る力

・皆の意見をまとめる力

・実力・実績から生まれる力

・他人の模範になる行動を常にとることから生まれる力

・カリスマ性

・適切な判断・指示を出す力

などなど、「リーダーシップとは?」という質問に対しては、十人十色の答えが出てくるのではないでしょうか。

 

「リーダーシップ」を日本語の一語に訳すると何でしょう?

「指導力」や、「指揮能力」といった言葉が上がるかもしれませんが、これ!という一語はありませんよね。

この辺りも、「リーダーシップ」とは何なのかという問いに対する答えが一つではないことを表しているのかもしれません。

 

ちなみに、英語で「leadership」(リーダーシップ)、「friendship」(フレンドシップ)などに使われる語尾の「ship」は、状態や身分、手腕を表す役割を果たすそうです。

「リーダーシップ」も何らかの力、あるいは身分・地位を表しているのでしょう。

 

一般社団法人の中で要求される「リーダーシップ」とはどのようなものでしょうか。

リーダーシップは、会社、学校、地域の集まりなど様々な場面で必要とされます。

その中でも、一般社団法人の代表理事に求められるのは、想いや理念、使命を追求し、法人内の他の人と共有できることではないでしょうか。

 

一般社団法人は、公益事業もする法人です。

自分たちの利益だけを考え、追求していけばいいわけではありません。

あなたが一般社団法人を設立したり、参加したりしたのには何かしらの理由や想いがあったはずです。

そして、一般社団法人のトップである代表理事が、その想いや理念の下に法人を運営し事業を遂行していくことで、上手くいくのではないでしょうか。

 

ぶれない理念を持って代表理事が行動し、法人が活動していれば、周囲の人を納得させることができるでしょうし、あなたに共感してくれる人も増えてくるでしょう。

だからこそ代表理事が率先して、理念や想い、使命を自覚し行動に移さなければならないのではないでしょうか。

 

普段の会議や業務の際にも判断の基準としたり、一般社団法人に関わる人に意識させたりすることも大切でしょう。

ただし、理念や想いを盾に、それをあたかも正義のように振り回して押し付けるのではなく、話し合いの際に有効に活用することも欠かせません。

一貫した想いがトップにあれば、それについてきてくれる人もいます。

考え方が違えば、いつもなぜこの一般社団法人を作ったのか・存在するのかを拠り所にして話し合えば良いと思います。

法人の利益追求などに目が向いてしまえば、せっかく共感してくれた人たちのモチベーションが下がってしまうかもしれません。

 

決して利益を上げることが悪いと言っているわけではありません。

私自身も今まで、

・子どもとの野外活動、キャンプ活動
・阪神大震災支援
・障害者の自立支援

などのボランティア活動に関わってきました。

そこでの経験で得たものは非常に大きく一生の宝ですので、多くの方に積極的にボランティア活動に、取り組んで欲しいと思っています。

 

しかし、まずその母体となる団体がしっかりと収益を上げていなければ、ボランティア活動をすることすらできません。

「私のビジネスで、教育問題を解決したい」

「私のビジネスで、介護問題を解決したい」

「私のビジネスで、うつ問題を解決したい」

このような「想い」も、継続できなければ叶いません。

 

私が大学時代に初めて関わったボランティア団体は、非常にすばらしい団体でした。

私を指導してくれるスタッフや先輩からの学びもたくさんあり、やりがいもあり、その活動にのめり込みました。

しかし、残念ながら母体の団体が活動停止したために、その活動が続けられませんでした。

その理由は、サービス利用者が減り、赤字が続いていたからです。

いくら素晴らしい活動でも、集客できず売り上げを上げることができなければ、続けることができません。

 

夢や志だけでは事業として成功しません。

一般社団法人に携わる方の中には、「儲け」という言葉に抵抗がある人もいるかもしれませんが、「活動資金」がなければ事業が継続できません。

あなたの一般社団法人の想いを実現するためには、利益も必要です。

まず想いや理念があって、そこに共感してくれる人の力があって、初めてお金の力が活きてくるのだと思います。

 

マインドとスキルの両方をバランスよく持つことが大切ではないかと考えています。

そして、その人の力を結集させるのが、一般社団法人の理事長に求められる力、リーダーシップではないでしょうか。

私の思うことを書きましたが、皆さんもそれぞれご意見があるかと思います。

一般社団法人のトップとして、どんなことが必要か考えてみてください。

 

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