一般社団法人は、社員総会の議事録を作成しなければなりません(一般社団法人法第57条)。 「何を書けばいいのか」「記載漏れがないか不安」そんな悩みをお持ちではありませんか? この記事を読めば、初めてでも正しい議事録が作成できます。 当事務所では200法人以上の運営をサポートしてきました。その経験を基に、議事録の書き方から保存方法まで、実務で必要な知識をすべて解説します。
社員総会議事録とは?
結論から言うと、社員総会議事録は「決めたことを後から証明するための記録」で、作成は法律上の義務です。社員総会の議事については、法務省令で定めるところにより議事録を作成しなければならない、とされています。
ここでいう社員は、会社の従業員ではなく社員(会員)のことです。社員(会員)が集まって、役員選任や決算承認などの重要事項を決める場が社員総会です。定時社員総会(毎年1回必ず開く総会)と、臨時社員総会(必要に応じて開く総会)があり、どちらも議事録が必要になります。
議事録は「形式が難しい書類」ではなく、必要事項さえ押さえれば、テンプレートで埋めるだけで作れます。特に役員変更など登記が絡むと、議事録の記載や押印の不備が原因で手続きが止まることもあるため、最初から”登記で見られる前提”で作るのが実務のコツです。
実際の相談では、「議事録を作ったことがないので不安」という声をよく聞きます。しかし、必要な6項目を押さえれば、初めてでも問題なく作成できます。むしろ、「完璧を目指しすぎて総会後に放置してしまう」方がリスクが高いため、まずはテンプレートを使って確実に作成する習慣をつけることが大切です。
また、議事録は単なる記録ではなく、将来的に法的な証拠として機能します。助成金申請や銀行融資の際に提出を求められることも多く、「あとで作れば良い」という考えは禁物です。総会終了後、できるだけ早く(理想は1週間以内に)作成することをおすすめします。
【図解①:社員総会と議事録の位置づけ】
社員(会員)
↓ 重要事項を決める
社員総会 → 議事録(決定内容の証拠)
↓ 決定に従って実行
理事(運営担当)一般社団法人の基本から確認したい方は、「一般社団法人とは」 をご覧ください。 設立や運営全体像は、「一般社団法人の設立前に知っておくべきメリット・デメリット 」も参考になります。
議事録に記載すべき6つの事項【記入例付き】
結論:社員総会議事録は、施行規則で定められた「6項目」を書けば、原則として形になります。 (※監事や会計監査人の意見が出た場合は、その概要も忘れずに入れます。)
開催日時・場所
日時と場所は必須です。オンライン開催なら、場所に加えて出席方法も書きます(例:Zoom参加)。
記入例
開催日時:2026年2月10日(火)13:00〜13:40
開催場所:法人の主たる事務所(法人の本店)会議室/オンライン(Zoom)併用
出席方法:Aは会場出席、BはZoomにより出席実務では、開催場所を「東京都渋谷区○○1-2-3」のように具体的な住所で書く必要はありません。「主たる事務所会議室」で十分です。ただし、貸し会議室を借りた場合は、「○○貸会議室(東京都渋谷区○○)」と記載すると、後から見返したときに分かりやすくなります。
議事の経過の要領及びその結果
「議事の経過の要領(会議の進行内容の要約)」と「結果(可決/否決、賛否)」を書きます。長文にするより、論点と結論が追える書き方が登記実務では好まれます。
記入例
第1号議案:第10期決算承認の件
議長より決算内容の説明があり、質疑の後、賛成多数により原案どおり承認可決した。これまでの経験で、「議事の詳細をどこまで書くべきか」という質問をよく受けます。基本的には、議題、主な説明内容、質疑応答の要点、そして結論(可決/否決)が分かれば十分です。発言者の名前まで全て記録する必要はありません。ただし、重要な反対意見や附帯決議があった場合は、その要旨を残しておくと後々役立ちます。
出席した理事・監事の氏名
出席役員はフルネームが基本です(会計監査人がいる場合は名称も)。
記入例
出席理事:代表理事 山田太郎、理事 佐藤花子
出席監事:鈴木一郎実務上、「理事全員が出席」の場合でも、省略せずに全員の氏名を列挙してください。「理事全員出席」だけでは、登記申請時に不備とされる可能性があります。
議長の氏名
議長がいる場合は必須。定款(法人のルールブック)で議長の定めがあることも多いので、定款の規定に沿って記載します。
記入例
議長:社員 山田太郎(定款第○条により選任)議事録作成者の氏名
議事録を作成した人の氏名を書きます。作成者は代表理事にするケースが多いですが、実態に合わせてOKです。
記入例
議事録作成者:代表理事 山田太郎監事・会計監査人の意見
監事や会計監査人が意見を述べた場合、その概要を記載します(「監事より○○の指摘」など)。
記入例
監事意見:監事より「会費収入の計上時期について、翌期より会員規約と整合させた運用にすることが望ましい」との発言があった。意見がなかった場合は、「監事より特段の意見なし」と記載するか、この項目自体を省略しても構いません。ただし、登記に関わる重要議案(役員選任など)では、監事の意見を明記しておく方が安全です。
「一般社団法人の設立要件」もあわせて読むと、混同が減ります。
【実例】よくある失敗事例と対策
結論:失敗は「押印」「日付」「社員と理事の混同」の3つに集中します。先に落とし穴を知っておけば、ほぼ防げます。
押印忘れで登記が却下された
役員変更などの登記で、議事録が添付書類になる場面があります。そのとき、署名や記名押印(名前を書いて印鑑を押すこと)が不足して補正、最悪は申請が通らないケースが実務で起こります。
実際にあったケースでは、議事録は完璧に作成されていたものの、代表理事の押印が漏れていたため、法務局から補正の連絡が入りました。押印を取り直すために代表理事と連絡を取り、再度押印してもらい、再提出するまでに2週間かかってしまいました。このような事態を避けるため、法律上の一律義務ではなくても、「提出先で確認される書類」だと考えて、最初から押印までセットで作るのが安全です。
特に、代表理事が遠方に住んでいたり、海外出張が多い場合は、総会当日にその場で押印してもらうことをおすすめします。
日付の記載ミス
「開催日」と「議事録作成日」を混ぜてしまう、和暦と西暦が途中で切り替わる、などのミスが多いです。登記と連動する場合は、決議日がズレると致命的なので、議案ごとに”決議日=開催日”を固定して確認しましょう。
これまでの支援経験の中で、「2025年度の決算を2026年3月に承認したのに、議事録の日付が2025年になっていた」というケースがありました。このようなミスは、登記申請時に不整合として指摘され、作り直しが必要になります。日付は必ず総会当日の日付で統一し、ダブルチェックを徹底してください。
社員と理事の混同
社員(会員)と理事(運営担当)を入れ替えて書いてしまう例もあります。社員総会は”社員(会員)が最終決定する場”なので、出席者欄や議長の扱いは特に注意が必要です(「社員=従業員」ではありません)。
実際の相談では、「出席者欄に『社員 山田太郎』と書くべきところを『理事 山田太郎』と書いてしまった」という事例がありました。山田太郎さんが社員兼理事だったため、どちらの立場で出席したのかが不明確になり、議事録の作り直しが必要になりました。
このようなミスを防ぐには、議事録作成前に「この総会は誰が決定権を持つのか(社員)」「誰が報告・説明をするのか(理事)」を明確にしておくことが重要です。
チェックリスト
- 開催日時・場所(オンラインなら出席方法も)を記載した
- 議事の経過の要領(会議の進行内容の要約)と結果(可決/否決)を書いた
- 出席理事・監事のフルネームを書いた
- 議長名、議事録作成者名を書いた
- 監事・会計監査人の意見があれば概要を書いた
- 押印する人(議長・作成者・出席役員等)を決め、印鑑も揃えた
議事録テンプレートの活用法
結論:テンプレートを使えば、議事録は「10分で埋める作業」になります。ポイントは、先に”会議メモ”を作ってからテンプレに転記することです。
記入の手順(3ステップ)
【図解②:作成の流れ】
①会議メモ(議案・決議・賛否)を作る
↓
②テンプレに転記(6項目を埋める)
↓
③署名/記名押印 → PDF化して保管- 会議メモ:議案名、結論、賛否の数(または「全会一致」)
- テンプレ転記:6項目を上から埋める
- 署名・押印:登記の可能性がある議案は特に慎重に
これまでの経験で、「総会中にリアルタイムで議事録を作ろうとして失敗する」ケースをよく見てきました。総会中は会議進行に集中し、簡単なメモだけを取る方が効率的です。詳細な議事録は総会終了後、落ち着いて作成しましょう。
記入例の参照方法
テンプレには「よくある文言」を入れておき、法人名や数字だけ差し替えると早いです。オンライン開催は、場所欄に「主たる事務所(法人の本店)+Zoom」などと書き、出席方法も併記しましょう。
ミニテンプレ(例)
社員総会議事録
1. 開催日時:2026年2月10日 13:00〜13:40
2. 開催場所:主たる事務所 会議室/オンライン(Zoom)
3. 出席役員:代表理事 山田太郎、理事 佐藤花子、監事 鈴木一郎
4. 議長:社員 山田太郎
5. 議事録作成者:代表理事 山田太郎
【議案】第1号議案 決算承認の件
議事の経過の要領及びその結果:
(会議の要約)…賛成多数により承認可決した。
【監事意見】(あれば)…概要…
以上
(署名/記名押印欄)議事録の保存期間と保管方法
結論:議事録は社員総会の日から10年間、主たる事務所(法人の本店)に備え置く(保管する)義務があります。 さらに、従たる事務所がある場合は写しを5年間備え置くルールもあります(電磁的記録(パソコンで作ったデータ/PDF)で一定措置を取る場合は例外)。
保管は「紙ファイル」でも「PDF」でも可能ですが、実務では紙+PDFの二重管理が安心です。社員や債権者は、業務時間内なら閲覧又は謄写(見ること、またはコピーを取ること)を請求できるため、すぐ出せる状態にしておきましょう。
実際の相談では、「10年前の議事録を紛失してしまった」というケースがあります。このような場合、再作成は事実上不可能です。そのため、作成直後にPDFでバックアップを取り、クラウドストレージ(Google DriveやDropboxなど)と外付けハードディスクの両方に保存することをおすすめします。
また、「すぐ出せる状態」とは、閲覧請求があった際に30分以内に提示できる状態を指します。事務所の鍵のかかるキャビネットに年度別ファイルで保管し、PDFのフォルダ名も「2026年度_社員総会議事録」のように統一しておくと、検索しやすくなります。
【図解③:保管イメージ】
(本店)10年保管
├ 紙:年度別ファイル(総会→理事会→契約書)
└ データ:PDF(バックアップ:クラウド+外付け)押印は必要?署名のルール
結論:社員総会議事録に押印が「常に法律で必須」とまでは言い切れませんが、実務上は”ほぼ必須”と考えて運用するのが安全です。特に登記で添付する可能性があるなら、後から押印を取り直すコストの方が大きくなります。
押印する場合は、最低でも「議長」「議事録作成者」の記名押印(名前を書いて印鑑を押すこと)を入れる運用が多いです。さらに、公益法人関係の実務資料でも、社員総会では議長や出席理事等の記名押印が有用とされる旨が示されています。
印鑑は、通常は認印でも足りますが、登記関係の提出書類として厳格に整えるなら、法人実印(法務局に登録した会社の印鑑)を使う場面も出ます。迷うときは「この議案は登記に使うか?」で判断してください(役員選任、代表理事選定などは要注意)。
これまでの支援経験では、「認印で議事録を作成したが、後から法務局への登記申請が必要になり、法人実印での押印を求められた」というケースがありました。最初から登記の可能性がある議案(役員選任、定款変更、解散など)は、法人実印で押印しておくと二度手間を防げます。
また、押印する人の順番にも注意が必要です。一般的には、議長→議事録作成者→出席理事の順で押印します。この順番を守ることで、議事録の信頼性が高まります。
みなし決議(書面決議)の場合
結論:みなし決議(全員の同意で総会を開かずに決めること)は、社員全員が書面または電磁的記録で同意すれば成立します。 実際に集まらない代わりに、「提案書」「全員の同意書(メールやPDF含む)」をセットで残すのがポイントです。みなし決議の場合も、10年間は主たる事務所に備え置く(保管する)必要があります。
実務では、社員が全国に散らばっている場合や、海外在住の社員がいる場合に、みなし決議を活用するケースが多いです。ただし、「全員の同意」が条件のため、一人でも反対者や無回答者がいると成立しません。そのため、提案書を送付する際は、回答期限を明確にし、リマインドの仕組みを作っておくことが重要です。
また、電磁的記録(メール)で同意を得る場合は、必ず返信メールを保存してください。後から「同意した覚えはない」と言われた際の証拠になります。
通常の議事録 vs みなし決議の「議事録等」比較表
| 項目 | 通常の社員総会 | みなし決議(書面決議) |
|---|---|---|
| 形 | 開催して議事録を作成 | 開催せず、提案書+全員同意(書面/電磁的記録) |
| 記載の中心 | 会議の進行内容の要約+結果 | 提案内容+全員同意の事実 |
| 署名・押印 | 実務上は入れるのが安全 | 同意書側に署名・押印(または電磁的同意)を残す |
| 保管 | 10年(本店) | 10年(本店) |
※「議決権行使書で投票する(欠席者が書面で票を入れる)」制度とは別物です。混同すると手続き設計がズレます。
よくある質問(FAQ)
Q1:議事録は誰が作成する?
結論:法律上の”担当者固定”はありません。実務では、代表理事や事務局が作成し、議長・作成者が記名押印する流れが多いです。登記に使う可能性がある議案は、最初から「登記提出」を想定して整えましょう。
これまでの経験で、小規模な法人では代表理事が自ら作成するケースが多く、中規模以上では事務局スタッフが作成し、代表理事が最終チェックする体制が一般的です。重要なのは、「誰が作成しても同じ品質になる仕組み」を作ることです。そのために、テンプレートとチェックリストを活用しましょう。
Q2:和暦と西暦どちらを使う?
結論:どちらでもOKですが、法人内で統一してください。議事録、招集通知、委任状など関連書類が混在するとミスの原因になります。
実務では、登記申請書類は和暦で統一することが多いため、議事録も和暦にしておくと整合性が取りやすくなります。ただし、国際的な活動をしている法人や、外国人社員が多い法人では、西暦の方が分かりやすい場合もあります。法人の実態に合わせて選択してください。
Q3:オンライン開催の場合は?
結論:場所に加えて、出席方法(Zoom等)を明記します。施行規則でも、会場にいない者が出席した場合の方法を含める趣旨が示されています。
実際の相談では、「オンライン参加者の本人確認はどうすればいいか」という質問をよく受けます。基本的には、カメラをオンにして顔を確認する、事前に参加用URLを社員本人のメールアドレスに送付する、などの方法で本人確認を行います。また、議事録には「オンライン参加者の音声・映像により本人確認を行った」と記載しておくと、後々のトラブルを防げます。
Q4:議事録がない場合のペナルティは?
結論:法律上の作成義務違反になり、内部統制上も大きなリスクです。何より「決議の証明」ができず、登記・銀行・助成金などで求められたときに詰みます。まずは直近の総会から整備し、過去分は可能な範囲で復元していくのが現実的です。
これまでの支援経験では、「5年前から議事録を作っていなかった」という法人もありました。このような場合、完全に復元することは不可能ですが、最低限、直近3年分は記憶や資料を頼りに作成することをおすすめします。また、今後は必ず作成する体制を整え、同じ失敗を繰り返さないことが最も重要です。
まとめ
社員総会議事録の作り方は、要点を押さえれば難しくありません。
- 記載は「6項目+意見があれば概要」
- 議事録は10年間、主たる事務所(法人の本店)に保管
- 押印は一律義務でなくても、登記実務を考えると入れるのが安全
- テンプレートを活用すれば、初めてでも10分で作成可能
- チェックリストで記載漏れを防ぐ
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